水中騒音調査

水中騒音調査概要

 水中騒音(例えば、海中工事の機械音など)の現況把握を目的として、静穏時(背景雑音)と騒音発生時の水中音を測定します。測定は、対象水中騒音の距離減衰状況を把握するために、騒音源から順次距離を離した位置において行います(図1参照)

水中騒音調査機材

 水中騒音調査機材の系統図を図2に示します。アクアサウンドは調査機材一式を用意できます。調査には校正されたハイドロホンを用います。

図2.調査機材例

水中騒音調査の結果

対象騒音の周波数分析

周波数分析は、音響または振動について、その成分の大きさを周波数の関数として求める手法です。分析結果であるラインスペクトル(ピーク)の周波数や周波数分布の傾きが、その音や振動の特徴を表現しています。この手法を用いて、騒音源の稼働時と停止時(背景雑音)の音を比較することで、騒音源の特徴を把握します。

図3に周波数分析の例を示します。図中の桃色の線が騒音源稼働時の騒音源から最も近い地点(測点1)での水中音、青線が騒音源稼働時の騒音源から離れた地点(測点2)での水中音、黒線が測点1での騒音源の停止時の水中音、すなわち背景雑音です。稼働時と停止時を比較することで騒音源の特徴を求めます。

対象騒音の伝搬特性

 各測点で測定した水中音を用いて対象騒音の伝搬特性(距離に対して音が小さくなっていく傾向)を求めます。図4に伝搬特性の結果例を示します。図中の●印が対象騒音の周波数帯の音圧レベルの測定値をプロットしたものです。騒音源より離れていくと音圧レベルが小さくなっていきます。例えば、測定海域の背景雑音レベルが75dB(図中の桃色の点線)だったとすると、図中の全ての測点は背景雑音レベルより大きな音であり、聞こえていることになります。

図4.対象騒音の音圧レベルの距離特性の例

海中音の音波伝搬シミュレーション

効率的な調査計画を立案するための事前の測定点の決定や、実測では測点数が多く取れない場合の影響範囲の評価などには、音波伝搬シミュレーションを用います。アクアサウンドは音波伝搬シミュレーションの技術を有しております。

伝搬経路

 騒音源から放射された音の経路を把握するには、音線計算を用います。図5に音線計算結果の例を示します(横軸が距離、縦軸が深度)。図中の曲線が計算された音線で、各音線の添字は、騒音源からの音線の放射角度を示しています。この計算例は、低緯度から中緯度の深度1000m付近に存在するSOFARチャネルと呼ばれる音波の道(トンネル内)で伝搬状況をシミュレートしたものです。海中での音波伝搬経路は、地形・音速プロファイル(緯度や海洋物理現象に依存)・音源深度などの様々な条件によって大きく変わります。この音線群の中で、音源と受波器を結ぶ音線のことを固有音線(Eigen ray)と呼びます。

伝搬損失

 受波器で対象騒音を検出するには、伝搬経路だけでなく、騒音源の音の大きさが重要になります。騒音源レベルが小さければ、受波器に到達する前に背景雑音に目的の音がマスクされてしまうからです。ここでは、音波伝搬シミュレーションを用いて、騒音源の音波伝搬損失量を予測します。
 図6に二次元損失量の計算結果例を示します(横軸が伝搬距離、縦軸が深度、カラーバーが音圧レベルを示します)。暖色が伝搬損失(Transmission Loss)量の小さいこと、寒色が大きいことを示しており、音源近傍で伝搬損失量が小さく、遠方では伝搬損失量の大きいことがわかります。このシミュレーションは周波数毎に計算することができます。この計算例は、中緯度の海域の海面付近でザトウクジラ(200Hz)が鳴いた場合をシミュレートしたものです。図中、干渉縞のように見える上下に変化する曲線が音線に対応しています。図7は、図6の受波器深度のみを表現したものです。

図6.二次元損失量分布計算例 音源が距離0mの海面付近
図7.受波器(任意)深度における距離に対する損失量(減衰特性)の計算例

参考文献

1)C.S. Clay and H. Medwin,“Acoustical Oceanography”Wiley-Interscience Publication,New York(1977).

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